Appleデバイスの管理ポータルである「Apple Business Manager(ABM)」や「Apple School Manager(ASM)」にログインし、ブラウザの読み込み待ちをしながら1つずつシリアル番号を検索する。そんな作業に、一日の貴重な時間を奪われてはいませんか?

数台、数十台ならまだしも、管理対象が数百、数千を超えてくると、Webインターフェースの「もっさり」とした挙動は、一人情シスの担当者にとって小さくないストレスになります。

「技術と運用の、ちょうどいい答え。」をモットーに、日々現場の悩みに向き合っています。今回は、Apple管理の現場に現れた「ASBMUtil」という強力なツールを軸に、ABM運用の効率を一段上のステージへ引き上げる方法を解説します。

Appleデバイスのゼロタッチ導入(箱を開けて電源を入れるだけで自動設定が始まる仕組み)に欠かせないのが、Apple Business Manager(ABM)です。
ここで購入したデバイスをMDM(Mobile Device Management:遠隔管理ソフト)に紐づけることで、初めて高度な運用が可能になります。

しかし、ABMのWebポータルは、大量のデバイスを一括で処理したり、詳細なフィルタリングをかけたりする際、必ずしも使い勝手が良いとは言えません。

そこで注目されているのが、Rod Christiansen氏が開発したmacOSネイティブアプリ「ASBMUtil」です。これは、Appleが昨年公開した公式API(外部プログラムからABMの機能を利用するための仕組み)をフル活用したツールです。ブラウザを介さず、SwiftUIで構築された高速なデスクトップ環境から直接ABMのデータを操作できるようになります。

Webブラウザの管理画面と、高速に動作するネイティブアプリの対比をイメージした清潔感のあるイラスト

このアプリの最大の特徴は、Appleが提供するAPIの各バージョンに忠実に対応している点にあります。単なる「見栄えの良いビューアー」ではなく、実務に耐えうる機能が実装されています。

全デバイスの一元管理と強力なフィルタリング

ABM内の全デバイス(Mac, iPad, iPhone, Apple TV)を単一のネイティブテーブルで表示できます。ブラウザのようにページ遷移を待つ必要がなく、シリアル番号、注文番号、モデル、割り当て先のMDMサーバーといった条件で、瞬時にフィルタリングや並び替えが可能です。

サイドバーによる詳細情報の可視化

特定のデバイスを選択すると、スッとサイドバーが現れます。そこには以下の情報が集約されています。
– シリアル番号
– 注文ステータス
– MDMサーバーの割り当て状況
– AppleCareの保証状況(API 1.3対応)
– MACアドレス(Wi-Fi, Bluetooth, Ethernetなど。API 1.2、1.4、1.5対応)

特筆すべきは、最新のAPI 1.5で追加された「複数のネットワークインターフェースを持つデバイスのMACアドレス配列」にも対応している点です。MacBookなどの管理において、有線と無線両方のMACアドレスを把握する必要がある担当者には、非常に価値のある機能でしょう。

バルク(一括)操作とCSV連携

複数のデバイスをマウスで選択し、右クリックメニューから別のMDMサーバーへ一括で割り当てを変更できます。また、手元にある管理台帳(CSV)をインポートして状態を反映させたり、現在のフィルタ結果をCSVやJSONでエクスポートしたりすることも容易です。

この新しいツールを業務に取り入れる際、情シス担当者が意識すべきポイントを3つにまとめました。

① APIトークンの適切な管理

ASBMUtilはAppleの公式APIを利用するため、ABM内で生成したAPIトークンをアプリに登録する必要があります。このトークンは強力な権限を持つため、管理用Mac自体のセキュリティ対策(ディスク暗号化やパスワードポリシー)が万全であることが前提となります

② 複数環境(マルチテナント)の切り替え

もしグループ会社や複数の拠点ごとにABMアカウントを分けて管理しているなら、サイドバーから簡単にプロファイルを切り替えられる機能が役立ちます。環境ごとにブラウザをシークレットモードで開き直す手間はもう不要です。

③ 運用フローへの組み込み

「全ての操作をASBMUtilで行う」のではなく、ABMポータルでしかできない設定(コンテンツの購入や管理者の追加など)と、ASBMUtilが得意とする「デバイスの割り当て・棚卸し」を使い分けるのがベストプラクティスです。

非常に便利なツールですが、導入時には公平な視点でのリスク評価が必要です。

GitHub経由のオープンソースソフトウェアであること
  ASBMUtilは、Apple自身が配布している公式ソフトウェアではありません。Rod Christiansen氏がGitHubで公開しているプロジェクトです。企業で利用する場合は、OSSの利用規約や自社のセキュリティポリシーに抵触しないか、コードの信頼性を確認する必要があります。
APIの仕様変更への依存
  このアプリはAppleの公式APIに依存しています。AppleがAPIの仕様を大幅に変更した場合、アプリが一時的に動作しなくなる可能性があります。常に最新のリリース(GitHub上のアップデート)をチェックする運用が必要です。
「確証がない」情報の扱い
  ソース情報によれば、現時点では主要な機能が安定して動作しているとされていますが、将来的なAppleのアップデート方針によっては、特定のAPIが制限される可能性もゼロではありません。あくまで「現在の公式APIが提供する範囲内での効率化ツール」として捉えるべきです。

API連携のフロー図と、その中心にあるセキュリティキーを象徴する、信頼感のあるグラフィック

ASBMUtilに興味を持ったなら、まずはスモールステップで検証を始めてください。

1. GitHubから最新のリリースを確認する
  まずは開発者のリポジトリにアクセスし、現在のバージョンとサポートされているAPIを確認してください。
2. 検証用デバイスでAPI連携を試す
  いきなり全デバイスを対象にするのではなく、まずは数台のテスト用デバイスが含まれる環境で、MDMの割り当て変更などが正常に反映されるかをテストします。
3. CSVエクスポート機能を棚卸しに活用する
  今の管理台帳とABM上の実態に乖離がないか、ASBMUtilの高速なフィルタとエクスポート機能を使って突合してみましょう。これだけでも、かなりの時短になるはずです。


モバイルデバイスの管理は、仕組み一つで「苦行」にも「クリエイティブな仕事」にもなり得ます。ASBMUtilのようなツールを賢く取り入れ、手作業の時間を減らすことで、本来情シスが取り組むべき「ビジネスの変革」に時間を割けるようになるはずです。

もし、「APIの使い方がよくわからない」「自社のセキュリティポリシーに合わせた安全な運用方法を知りたい」といったお悩みがあれば、私たちにご相談ください。

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