はじめに
「休暇中に限ってトラブルは起きる」——情シスなら誰もが実感している法則ではないでしょうか。
お盆休みまであと1か月。長期休暇は、情シスにとって年に数回の「無人運転期間」です。オフィスに人がいない間もサーバーは動き、スマホは持ち出され、攻撃者は休んでくれません。実際、長期休暇はフィッシングやランサムウェアの被害が表面化しやすいタイミングとして、毎年注意喚起が出ています。
この記事では、一人情シスが夏季休暇前の1〜2週間で実施できるIT点検を、チェックリスト形式で10項目にまとめました。金曜の午後にでも、順番に潰していってください。

領域1:デバイスまわりの点検(4項目)
□ 1. MDMの管理外デバイスを洗い出す
MDM(モバイルデバイス管理。会社のスマホ・PCを一元管理する仕組み)の管理画面で、最終同期日時が古い端末を確認します。30日以上同期していない端末は、休暇中に紛失しても気づけません。休暇前に一度、全端末の生存確認をしておきましょう。
□ 2. OS・セキュリティ更新を適用しておく
休暇中に重大な脆弱性が公表されても、即座に対応できません。配信済みの更新は休暇前に適用を完了させます。MDMの一括配信を使えば、この作業は数クリックです。
注意したいのは適用のタイミングです。休暇直前の金曜夜に一斉配信すると、更新後の不具合に対応する時間がありません。遅くとも休暇の1週間前には配信し、数日間の「様子見期間」を確保してください。更新は「早めに打って、経過を見る」が原則です。
□ 3. 持ち出し端末の紛失時フローを再確認する
帰省や旅行に社用スマホを持っていく社員は必ずいます。紛失時に「誰に連絡→誰がリモートロック」するのか、手順が今も有効か確認してください。リモートワイプ(遠隔初期化)の実行権限者が休暇中で連絡がつかない、という事態が一番怖いのです。
あわせて、MDMの管理画面に自分以外がログインできるかも点検を。二次権限者を用意していない場合、最低限「閲覧+ロック操作のみ」の権限で1名追加しておくと、休暇中の紛失にも対応できます。テスト用端末で一度リモートロックを実演し、手順を録画して共有しておけば、当日に電話で説明する必要もなくなります。
□ 4. 会社に残る端末の電源方針を決める
長期間無人になるオフィスの端末は、原則シャットダウン。逆に、リモート保守に必要な機器は電源とネットワークを維持。「どれを落とし、どれを残すか」のリストを作って庶務担当と共有します。

領域2:アカウントと権限の点検(3項目)
□ 5. 退職・異動者のアカウントを棚卸しする
6月末〜7月は異動の多い時期です。削除漏れのアカウントは、無人期間中の格好の侵入口になります。全社アカウント一覧と現在の在籍者を突き合わせておきましょう。
見落としやすいのは、メールやグループウェア以外の「周辺サービス」です。ファイル共有、チャット、勤怠、経費精算、そして各種SaaSの管理画面。退職者のアカウントがメールだけ削除されて他に残っている、というケースは珍しくありません。サービスの一覧表(台帳)がない場合は、この機会に作ってしまうのが結局いちばんの近道です。
□ 6. 管理者アカウントの多要素認証を確認する
管理者権限を持つアカウントに多要素認証(パスワードに加えてスマホ確認などを求める仕組み)が全て有効になっているか。1つでも例外があれば、休暇前に必ず塞ぎます。
□ 7. 休暇中だけの「代理権限」を最小限で用意する
自分の不在中、最低限の操作(アカウントロック解除など)を任せる代理人を決め、必要最小限の権限だけ付与します。全権を渡す必要はありません。休み明けに権限を戻すことまでカレンダーに登録して、初めて完了です。
領域3:連絡体制と社員への周知(3項目)
□ 8. 「緊急」の定義を宣言する
何かあれば全部電話が来る状態では、休暇になりません。「業務が完全に止まる場合のみ電話。それ以外はメールで休み明けに対応」と事前に宣言します。基準を決めるのは休暇前しかできません。
宣言の例を挙げると——「全社的にメールが使えない」「サーバーが停止して業務が止まっている」「端末の紛失・盗難」は電話。「パスワードを忘れた」「プリンターが動かない」「特定のアプリの使い方が分からない」はメールで休み明け対応。このように具体例で書くのがコツです。「緊急時のみ」という抽象的な表現では、すべてが緊急になります。
□ 9. 休暇前の注意喚起を全社に流す
「休暇中は不審メールに注意」「端末を車内に放置しない」「公共Wi-Fiでの業務は避ける」の3点だけでも、休暇1週間前に全社メールで流しておきます。毎年同じ文面で構いません。習慣にすることに意味があります。
□ 10. 休み明け対応の「先回りメモ」を書く
休暇明けの自分への申し送りです。「初日はパスワード忘れの問い合わせが集中する」「保留中の案件はこれ」——書いておくだけで、休み明けの立ち上がりがまるで違います。
実際、長期休暇明けの情シスに最初に降ってくるのは、ほぼ例外なくパスワード関連です。休みの間に頭からパスワードが抜け落ちた社員が、始業と同時に列を作ります。セルフサービスのパスワードリセットを導入済みなら、その使い方の案内を休暇前の全社メール(項目9)に一行足しておくだけで、初日の問い合わせは目に見えて減ります。未導入なら、これも夏の宿題候補です。
落とし穴:チェックリストを「全部やろう」としない
注意点をひとつ。10項目を完璧にこなそうとして、結局手つかずのまま休暇に突入するのが最悪のパターンです。
優先順位をつけるなら、まず6(多要素認証)と3(紛失時フロー)。この2つは事故が起きたときの被害額が桁違いだからです。残りは「できたら」で構いません。半分できれば、去年より確実に安全な夏です。
まとめ
休暇前のIT点検は、裏を返せば「自分がいなくても会社のITが数日回る状態」を作る訓練でもあります。ここで作った手順書やチェックリストは、休暇のたびに使い回せる資産になります。今年の夏を、仕組み作りのきっかけにしてください。
Mobitech Solutionへのご相談
「点検したいが、そもそもMDMで何ができるのか分からない」「紛失時のフローを整備したい」——Mobitech Solutionでは、一人情シスの現場に合わせたデバイス管理体制の構築・点検をお手伝いしています。休暇シーズン前の「かかりつけ点検」として、お気軽にご相談ください。